この前近所の梅の花が咲いていたよ
この前街で袴姿の女子学生を見たよ
風が強くて飛ばされたよ
ティッシュの減りが早いよ
春だねぇ〜
だんだんと暖かい日が増えてきて、道端の植物や木々のつぼみのふくらみからも季節の変わり目を感じる春。
この時期はなにかと忙しく、春をゆっくり味わう暇もないまま通り過ぎてしまう、なんてこともあるのではないでしょうか。
今回は、待ちわびた春の訪れをしっかりと感じ、春の喜びをじっくりと味わえるような絵本を5冊ご紹介します。
大人も子どももウキウキする春を絵本のページをめくりながら楽しんでください。
春になったらあけてください
作:増井 邦恵
絵:あべ まれこ
出版社:BL出版
対象年齢:3歳〜
● 内容・あらすじ
「ぼく」のお母さんの趣味は懸賞に応募すること。
今日も当選した景品が届いたみたいですよ。
箱の中に入っていた缶には
「春になったらあけてください」
との一文が。
「ぼく」たちは家族で中身を想像しながら、春を楽しみに待つことにしました。
さて、缶の中身は何だったのでしょうか?
懸賞で当たった缶の中身を考えるという、現実にもありそうな展開から始まる点に親しみを感じました。
大人や子どもがそれぞれに春をイメージするシーンも、興味深かったです。
エンディングに訪れる「幸せ」に、なるほどと思わず笑顔になりました。
● おすすめポイント
*見ているだけでワクワクする!独特の色彩とタッチの絵
淡い色のグラデーションが美しい、鮮やかな色彩で描かれた絵は、見ているだけでもワクワクしてきます!
登場人物たちのイキイキとした表情からも、仲の良い家族の雰囲気が伝わってきて、読みながら自然と笑顔になれる絵本です。
*文章が多めの作品!小学生のお子さんにもピッタリ
小学生くらいのお子さんが読んでも読みごたえのある、文章が多めの絵本です。
漢字も使われていますが読み仮名がふられていますので、ひらがなだけの絵本からのステップアップにもおすすめです!
*缶の中身はなんだろう?みんなが思い描くそれぞれの「春」
缶の中身を想像して、家族みんながそれぞれの春のイメージを語るシーンでは、年齢や立場の違いで春に抱くイメージの違いを比べて楽しめます。
絵本を見ながら、お子さんと一緒に春を感じる瞬間について語り合ってみてください!
じっちょりんのあるくみち
作:かとう あじゅ
出版社名:文渓堂
対象年齢:2歳〜
● 内容・あらすじ
虫と妖精の中間のような不思議な生き物『じっちょりん』。
いろんな植物の種がいっぱいつまったかばんを背負って、今日は家族で街へお出かけです。
上手に隠れながら、街のあちこちに種をまいていきますよ。
さあ、みんなでじっちょりんと春の旅へ出かけましょう
表紙を一目見たときから、じっちょりん一家に心を掴まれました!
こんなにかわいらしい生き物が身近にいてくれると考えただけでうれしくなります!
読み終えた時、近所にお散歩に出かけたくなる絵本です。
● おすすめポイント
*普段とは違う視点!じっちょりんの目線で描かれる街並み
とても小さいじっちょりんの目線で見る世界は、人間が見ている世界とは全く違って見えます。
人間ではとても入っていけないような空間を、自分も小さくなった気分で探検してみましょう!
*街で見かける春の草花たち!全部覚えて探してみよう!
この絵本では普段何気なく目にしている植物の名前が、一つ一つ丁寧に表記されています。
お子さんと名前を覚えて、実際に外に出て探して楽しんでみてください!
*春になればわかる、タイトルの素敵な意味
春になるとアスファルトの隙間やあちこちの道端で、春の草花たちがいつのまにか花を咲かせています。
実はそこはじっちょりんたちが通った後かもしれません。
この絵本を読んでからお子さんと街に出かけて、じっちょりんたちの歩いた道のりをたどりながら、春の訪れを感じてください。
はるのゆきだるま
作者:石鍋 芙佐子
出版社:偕成社
対象年齢:3歳〜
● 内容・あらすじ
とある山の中に、春を知らないひとりぼっちのゆきだるまが立っていました。
森の動物たちは、春になったら「春のおみやげ」を持ってくるとゆきだるまに約束します。
やがてやってきた暖かい春。
動物たちは春の花を握りしめて、ゆきだるまの元へと向かいますが・・・。
タイトルを読んだだけでも切ない気持ちになる、不思議な吸引力のある絵本です。
終盤には、ページをめくる手を止められなくなる展開も用意されています。
ゆきだるまや動物たちの気持ちがじんわりと心に沁みてくる味わい深い物語でした。
● おすすめポイント
*冬の寒さと春の暖かさを感じる独特のタッチの絵
この絵本では雪深い冬から、緑と花がいっぱいの春への移り変わりが描かれます。力強さとあたたかみが共存する独特のタッチの絵によって表現された、冬の厳しい寒さと春のうららかな陽気が、ストーリーに深みを与えています。
*ひとり読みにも読み聞かせにもピッタリの親しみを感じる文体
物語はおだやかな文体でつづられ、読んでいるうちに心が落ち着いてくるような、親しみやすく読みやすい絵本です。お子さんが眠る前の読み聞かせ用にも、文字を覚えたてのお子さんのひとり読み用にもピッタリだと思います!
*少し切ないストーリーから感じる季節の移ろい
決して共存できない「ゆきだるま」と「春」が主題の物語には、終始切なさが漂っています。
この切ない気持ちが教えてくれるのは、「同じ季節は二度とめぐってこない」ということ。
季節の移ろいと、今を大切に生きようというメッセージを伝えてくれる絵本です。
14ひきのぴくにっく
作:いわむら かずお
出版社:童心社
対象年齢:3歳〜
● 内容・あらすじ
いいお天気のとある朝。
14ひきのねずみの一家は、みんなでピクニックの準備をしています。
冬眠から目覚めたかえるさんや鳥さんたちにあいさつしながら、春のお花がいっぱいの森や野原を進みます。
待ちに待った暖かい春の一日を、ねずみの一家と一緒に満喫しましょう!
このシリーズはどの作品を読んでも、ほくほくとした気持ちになります。
今回は「春をめいっぱい楽しむために、家族でピクニックに出かける」という設定にまず癒されました。
春のピクニックを楽しみに待っているお子さんと一緒に読むと、より楽しいのではないでしょうか。
● おすすめポイント
*まさに「絵」本!ページ全体から感じる春の空気
まさに「絵」本と言いたくなる一冊です!
とにかく絵が伝えてくれることの多さに驚かされます。
日差しや、空の色、影、そのすべてから春の空気が感じられ、絵を見ているだけで、春のあたたかな一日を過ごしているような気分になります!
*ピクニックは大冒険?!森や野原を探検する14ひきの一家
ピクニックといえば、公園でお弁当を広げて・・・
という場面を思い浮かべますが、ねずみの一家のピクニックは、森を抜け小川をわたる大冒険です!
春の陽気の中を進んでいく14ひきの姿を通して、ピクニックの本当の楽しさを教えてくれます!
*親子で探して楽しめる!春の植物や生き物がたくさん登場!
ページいっぱいに描かれた、リアルな森や野原の風景。もちろん春の植物や生き物たちもリアルに描かれています。
ねずみ目線の世界では、すべての動植物も大きく描かれているので、細部までじっくりと観察して楽しんでみてください!
はるがきた
作:ジーン・ジオン
絵:マーガレット・ブロイ・グレアム
訳:こみやゆう
出版社:主婦の友社
対象年齢:2歳〜
● 内容・あらすじ
暦の上ではもう春なのに、今年の春はなかなかやってきてくれません。
くすんだ灰色の街を見て、大人も子どももうんざりしていました。
そんなとき一人の子どもが「みんなで街を春にしよう!」と言い出したことから、街を挙げての一大プロジェクトが始まります!
独特の色合いと絵のタッチが印象的で、思わず手に取りたくなる絵本です。
ストーリーにも起承転結がしっかりあって、読み応えがありました。
絵本自体が大きめなので、テーブルや床に広げて、家族みんなで楽しむのもいいと思います。
● おすすめポイント
*色のバリエーションは少ないのに、なぜか感じる鮮やかさ!
この絵本では、黄色・青・緑・黒・白・灰色の6色のみが使われています。
色のバリエーションが少ないのにも関わらず、春のあたたかさや鮮やかさを感じられる不思議な作品です。
勢いのある独特のタッチで描かれる街や人には躍動感があり、絵を眺めているだけでも楽しくなります!
*大人も子どもも関係なく、協力し合う町の人びとの姿にほっこり
絵本の舞台は、子どもがのびのびと発言できる世界。
子どもの提案をきっかけに大人たちも動き、年齢や立場に関係なく協力し合う様子を見ていると、自然と心があたたかくなります。
この絵本を読んで、ぜひお子さんの自由な感想を楽しんでみてください!
*何度味わってもうれしい春の訪れ!二つの春を通して気づくこと
この絵本は、春の訪れを二度も楽しめるお得な一冊です!
絵本の中の二つの春は、それぞれに違った喜びを人々に与えてくれます。
それぞれの春に対してどんな気持ちを抱くか、お子さんと話し合い、喜びを感じる瞬間について一緒に考えてみてください!
今回は春の訪れを感じられる、春の喜びにあふれた作品を選びました。
寒い冬を越えて草木が芽吹き、あざやかな色を取り戻す春は、景色を眺めているだけでも心楽しいものです。
ご紹介した絵本を読んで、みなさんそれぞれの春の楽しみ方を発見していただけたら嬉しく思います。